「和モダンな空間になじむ、グレイッシュな「スイッチプレート」をつくってみた!」 | イロトカ WAKAYAMA SURFACE DESIGN

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#001

試作品つくってみた!

〈建材・内装材編 〉
「和モダンな空間になじむ、グレイッシュな「スイッチプレート」をつくってみた!」

公開

塗装やメッキをはじめとする表面加工を手がけるワカヤマ。製造受託企業なので基本的にはお客様から依頼のあった製品しかつくりませんが、社内の「ものつくり戦略室」では日々さまざまな製品企画のアイデアが生まれています。「こんな製品があればいいよね」「ワカヤマならつくれるんじゃない?」。それぞれのアイデアについて話し合ううちに、社員たちの“つくりたい欲”は高まるばかり……。

ならばつくってしまおう! ということで、「試作品、つくってみた!」プロジェクトが始動。誰にも頼まれていないのに勝手に試作品をつくる、その過程の一部始終をお届けします。

MEMBER

  • 株式会社ワカヤマ
    ものつくり戦略室
    山本

  • 株式会社ワカヤマ
    ものつくり戦略室
    田中

  • 株式会社ワカヤマ
    営業
    藤林

  • 株式会社ワカヤマ
    営業
    西野

  • 株式会社KATATI

    オチ・アキラ

  • 株式会社KATATI

    越智ゆみ

STEP1
製品企画のためのヒアリング with 設計士

2024年5月、プロジェクトメンバーたちが集まって初回の会議を開きました。参加したのは、弊社ものつくり戦略室の山本と田中、営業部の藤林と西野、そして本ウェブサイトの企画・運営を担当する株式会社KATATIの越智ゆみとオチアキラ。

プロジェクトの記念すべき第一弾として何をつくるべきか。試作品の制作を前提にしているため、メンバーの議論にもおのずと熱が入ります。いろいろなアイデアが出るなかで、もっとも耳目を集めたのは越智が口にした「建材」というキーワード。建物の内装デザインの仕事も手がける越智によると、建材の中でも金属やプラスチックでできた小さなパーツは色や加工のバリエーションが少なく、以前から不満を抱いていたのだそうです。

建材って色や加工のバリエーションが少ないんですよ。

ワカヤマもキッチン用の水栓の表面加工をした経験があり、建材は興味のある分野のひとつ。そこでアイテムを建材に絞って議論を深めたところ、カーテンのふさかけ、ドアノブ、ダウンライト、スイッチプレートなどの案が出ましたが、どれか1つに決めることがなかなかできません。見かねた越智が、知人の設計士へのヒアリングを提案。設計士や建築家は、建材選びのプロだからです。メンバー全員が賛成し、日を改めて設計士を交えたミーティングの場を持つことになりました。

ご協力いただいたのは、大阪に事務所を構える設計士の小栗高志さん。さっそくこれまでに出たカーテンのふさかけ、ドアノブ、スイッチプレートなどの案をぶつけてみたものの、小栗さんはピンとこない様子。小栗さん曰く、設計士が建材の中でこだわるのはクロスや床材、建具といった面積の広い“大物”で、ワカヤマが表面加工を得意としている“小物”はあくまでも脇役。たとえばスイッチプレートはクロスに馴染ませて消したいくらいの存在であって、色を塗ったり加工をしたいとは思わないというのです。

二級建築士 小栗 高志

OGURI DESIGN OFFICE 代表
2005年に大阪芸術大学を卒業後、大手内装設計施工会社勤務を経て、
2014年「OGURI DESIGN OFFICE」設立。店舗、オフィス、住居などの設計デザインを行う。
「YOHJIYAMAMOTO」の店舗内装デザインの実績多数。

スイッチプレートなどは何の変哲もない既製品で十分なんですよね……。

まさかの、これまでの議論を全否定されたかのような発言に呆然とする一同。しかし、小栗さんの「クロスに馴染ませたい」という発言に反応した営業の西野がすかさず色見本帳を取り出して見せると、小栗さんの表情に変化が。

ワカヤマでは塗料を専任のスタッフが自社で調色しているため、お客様が要望するあらゆる色での塗装が可能。「やや赤味がかったベージュ」などの繊細な色も表現することができます。

こんなに繊細な色で塗装することができるんですか?

そうなんです。ワカヤマは塗料を自社で調色しているので、複雑な色も曖昧な色もお任せください。

これならどんな色の壁紙にも馴染むスイッチプレートができると思いませんか?

近年の住宅や店舗の内装デザインでは、クロスに従来の白っぽい色ではなく、複数の色味が混ざったような曖昧な中間色、いわゆる“ニュアンスカラー”が選ばれる傾向があります。ワカヤマの調色と加工の技術があれば、ニュアンスカラーの壁紙に完全に馴染んだり、ニュアンスカラーの壁紙に合わせたアクセントとして機能するスイッチプレートがつくれるかもしれない。そうすると、スイッチプレートを内装デザインの“邪魔者”にするのではなく、スイッチプレートも含めたトータルなデザインが提案できます。最初に「建材」を提案した越智の意図はそこにありました。

スイッチプレートにカラーバリエーションがあるのは良いですね! 設計士としても、内装デザインの引き出しは増やしたいところです

小栗さんの一声と議論の流れから、プロジェクト第一弾のアイテムはおのずとスイッチプレートに。しかも、ここ最近の内装デザインのトレンドだというグレー系の壁紙に馴染むスイッチプレートをつくることに決定しました。よーし、小栗さんのお眼鏡にかなうスイッチプレートをつくっちゃうぞー!

STEP2
具体的な色と加工は? 製品詳細を詰める

次の会議では、前回決まった「グレー系の壁紙に馴染むスイッチプレート」という企画をもとに、具体的にはどの色にするのか、特殊加工の有無などについて議論。

メンバーそれぞれが想定した空間のイメージを提示しながら、スイッチプレートのカラー案をプレゼンします。プレゼンの趣旨は以下のとおり。

グレーを基調にしたモダンなリビングやダイニングを想定。色は、アンダー気味の濃いグレーや明るいグレーなど、グレーのグラデーションの中からいくつか選定する。

和モダンな空間を想定。色は、DICカラーガイドの「日本の伝統色」から「鉛色」「深川鼠」「錫色」などグレー系のニュアンスカラーを選定。色もきれいだし、色に風流な名前がついているのも素敵!

旅館の客室のような和モダンな空間を想定。和風の空間なら、縮み模様やクラックが入ったようになる表面加工、朽ちたような質感になるソフトタッチ加工を施してもおもしろそう。

メタリックなグレー、マットなグレー、ツヤ感のあるグレーなど、素材感を重視。個人的にはマット系推し。ワカヤマ自慢の機能性塗料の中から静電気防止のものを選ぶ。

モルタルの壁と床、空調ダクトを露出させた天井などで構成されたインダストリアルでありながらも上品な空間を想定。色は、日本塗料工業会の色見本帳から黄味がかった明るい灰色、ホワイトドーヴカラー、石畳のようなグレーなどを選定。

木やモルタルで構成されたモダンなミニマムハウスを想定。色は、壁紙屋本舗の「グレーペイント」という人気のグレーを集めたシリーズからピックアップ。

以上のプレゼンを受けて、メンバーからもっとも多く支持を集めたのは……営業の西野が提案した「DIC『日本の伝統色』から色を選ぶ」という案! 決め手は、西野がプレゼンで触れた「色に名前がついていてストーリー性がある」点、そして「色のバリエーションが多いので商品化が実現したら複数のアイテムがつくれる」点。最終的に、以下の仕様で試作品をつくることが決定しました。

ここまでくれば、あとは試作するのみ。舞台はワカヤマの工場へ移ります。

STEP3
工場にて塗装・加工→試作品の完成

塗装を担当するのは、勤続19年のベテラン職人・カラー課の高島。営業メンバーが高島に、塗装前のスイッチプレートと、色のニュアンスが微妙に異なる複数のグレーのカラーチップを託します。営業メンバーと一緒に工場見学へ行った越智は興味津々の様子。

カラー課の高島です。

高島さん、今回塗装してほしいこれらの色は、どれも大まかに言えばグレーですが、ニュアンスが微妙に異なっています。このわずかな違いをそれぞれに塗装で表現できるのでしょうか?

できるよ。いつも普通にやってることやし。

当たり前だろうと言わんばかりの高島。たじろぐ越智。

なるほど。塗装の工程は?

調色した塗料をスイッチプレートにスプレーガンで塗布して、乾かして、オーダー通りの色になっているかカラー課内で一度チェックする。それで問題がなければ営業に提出して、もしダメ出しされたらやり直す。

最初の調色のハードルがかなり高い気がするのですが……。

色のレシピの膨大なデータが社内に蓄積されてるからね。まずはオーダーの色に似た色のレシピを持ってきて、そこからいろんな色を足していってオーダー通りの色に近づけていく。

簡単そうに聞こえますけど、実際にやるとめちゃくちゃむずかしいですよね。調色の感覚を習得するまでに長い年月がかかるんじゃないですか?

まあ、そうやね。最近、調色を任されるようになった入社3年目の子でも、まだ上の人間が見てあげる必要があるから。慣れるまでには一定の時間がかかるかな。

まさに職人技ですね……! スイッチプレートの塗装、楽しみにしています!

涼しい顔で除塵室内へ消えて行った高島の背中を見守る越智。その後、仕上がった完成品がこちらです!

「なんと美しい……」。高島の塗装にほれぼれとするプロジェクトメンバーたち。クオリティの高さは明らかだと感じますが、身内だけで褒めていても真価はわかりません。ぜひ外部の人にも見てもらおうと、ふたたび設計士の小栗さんを訪ねました。

小栗さん、スイッチプレートが完成しましたよ! 設計士さんから見て、こういう建材はいかがですか?

おお、すごい! グレーのスイッチプレートなら大手建材メーカーのショールームに並んでいそうですが、これは単純なグレーではなく、ベージュや茶系の暖色が混ざってますよね。

和モダンな内装デザインの空間を想定して、DICカラーガイドの「日本の伝統色」から選んだ色なんです。

たとえば和室の壁を土壁や土壁風のクロスにすると、プラスチックのスイッチプレートのような建材はどうしても馴染まないのですが、この色ならしっくりくる気がします。

「日本の伝統色」という名前も良い。色だけ見るとグレー系の色なんだけど、名前を知ると自然と「和」をイメージしてしまうというか。

最初、小栗さんは「内装デザイン的には、スイッチプレートはできれば消してしまいたい」とおっしゃっていましたが、このスイッチプレートなら消されずに済みそうですか?(笑)

むしろ使いたいです!(笑) いやー、正直に言うと、まさかここまで素敵な仕上がりになるとは思っていませんでした。

小栗さんから「使いたい」のお言葉をいただきました! プロの設計士に太鼓判をもらったような気分になり、表面加工の可能性に手応えを感じるプロジェクトメンバーたち。どうやら「試作品、作ってみた!」の第1回は、成功したと言って良さそうです。次は、どんなアイテムに、表面加工で新たな価値を付加しよう? 数え切れないほどのアイデアを抱え、プロジェクトは続きます。

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