#001
柴田株式会社 様
業界初の“カラー骨”を使ったオリジナル製品で、
長く大切に使われる“ファッション雑貨としての傘”の復権をめざす
公開
1937年創業の老舗傘メーカー、柴田株式会社。創業以来長きにわたり、傘のOEM・卸メーカーとして、名だたるブランドの傘を製造してきました。そんな同社が、85年の歴史で初めてとなる自社ブランド「A・A・RA(ア・ア・ラ)」を2023年にスタート。「A・A・RA」の最大の特徴は、業界でもめずらしい色とりどりの“カラー骨”です。その“カラー骨”の塗装を手がけたのが、私たちワカヤマ。なぜこのタイミングで自社初のオリジナルブランドを立ち上げたのか、重要なパーツの塗装をワカヤマに依頼してくださったのか。柴田株式会社 代表取締役社長の柴田成俊さん、営業本部 課長 田中慎さん、PRマネージャー 福井直子さんにお話をうかがいました。
お話を聞かせてもらった人
-
柴田株式会社
代表取締役社長
柴田成俊 氏 -
柴田株式会社
営業本部 課長
田中慎 氏 -
柴田株式会社
PRマネージャー
福井直子 氏
お話を聞いた人
-
株式会社ワカヤマ
営業部
西野成太郎 -
株式会社ワカヤマ
営業部
藤林直人
3代目社長が
初の自社ブランドを立ち上げた理由
藤林:
御社は2023年3月にオリジナルブランド「A・A・RA」( https://aara.shibata-kemie.com/ )をローンチしてます。なぜ創業85年のタイミングで初めての自社ブランドを立ち上げたのか、理由をあらためて教えていただけますか?
柴田:
いろいろな要因があっての決断でしたが、ひとことで言うと「日本製の傘を守るため」です。弊社はもともと問屋さんや百貨店さんに商品を卸していたメーカーで、かつて、洋傘の最盛期には、われわれのような国内傘メーカーが100社以上ありました。
それが近年は日本の経済停滞や、ワンコインで買えるビニール傘の台頭などにより多くの国内メーカーが製造の拠点を海外に移すようになり、日本の傘市場における国内メーカーの割合はわずか1%未満に。ほとんどの傘が中国やカンボジアで製造されています。
そんななか、弊社は数少ない国内メーカーとして傘の製造をつづけていましたが、コロナ禍によって主要な取引先である問屋や百貨店が大打撃を受け、われわれも経営危機に陥ってしまいます。これまでと同じやり方では経営が立ち行かなくなるならば、弊社もいよいよ製造拠点の主軸を海外に移すべきか。
しかし、弊社は大勢の傘職人を社内外に抱えています。われわれが日本製の傘をつくらなくなると、職人さんたちは路頭に迷い、長年培ってきた傘づくり技術の継承も途絶えてしまう。そう考えると、日本での製造をやめるわけにはいかない。ではどうすればいいかと打開策を模索し、思い至ったのが「自社ブランド」というアイデアでした。国産傘の需要を増やすのがむずかしいなら、付加価値の高いオリジナルの傘を開発し、職人さんたちの工賃を上げよう、と。
田中:
自社ブランドを立ち上げるにあたり、どうせならこれまでに例のないファッショナブルな傘をつくろうということになりました。たとえば、傘の骨組みといえばシルバーや黒がほとんどなので、鮮やかな色の骨組みの傘があればおもしろいんじゃないか。しかも、豊富なカラーバリエーションがあれば、よりほかの傘との差別化ができます。
藤林:
そんな発想でオリジナルブランド「A・A・RA」が立ち上がったわけですね。骨の色が商品のキモだと感じますが、その塗装をワカヤマに依頼してくださったのはなぜなんでしょう。
田中:
その時点で弊社とワカヤマさんにお付き合いはありませんでしたが、うちの社内に個人的にワカヤマさんに仕事を依頼したことのあるスタッフがいまして、ワカヤマさんというお名前は存じていたんです。
ただ、弊社としてもオリジナルブランドの立ち上げは社運をかけたプロジェクトですから、骨の塗装を依頼する企業は吟味する必要があります。そこで、引き受けてくれそうな企業を「小物 塗装」などのキーワードでネット検索し、複数の企業にお声がけしました。最終的にワカヤマさんともう1社にサンプルをつくっていただいたんです。
その結果、私たちの望むクオリティに仕上げてくださったのがワカヤマさんだった。私たちとしては骨の金属の質感を活かしたクリアな塗装を依頼したつもりでしたが、もう1社から上がってきたものがベタ塗りのような塗装で。一方、ワカヤマさんから上がってきたものは、思い描いていたとおりの美しくクリアな塗装でした。
柴田:
技術力の高さに加え、レスポンスの良さも決め手でしたね。われわれも骨の塗装を依頼するのは初めての経験だったので、正直、わからないことが多かったんです。そこであれこれ電話で質問するわけですが、どの質問にも営業担当の方がその場で即答してくださった。営業担当者が製造を把握している証左だと思って感心しました。
その後、福井に足を運んで工場を拝見したときに心が決まりましたね。製造ラインは整い、スタッフのみなさんは活き活きと仕事し、見渡してもゴミひとつ落ちていない。これはすごい工場やと。見学したあと、田中とも「すごい工場やったな」と言い合いながら東京に帰ったんです。「食堂まですごかったなあ」と(笑)。
藤林:
食堂までお褒めいただけるとは……ありがとうございます(笑)。
傘を長く使ってもらうことが
社会問題の解消につながる
藤林:
弊社が納品したカラー骨について、現時点での課題や今後のリクエストはありますか?
柴田:
現状、「A・A・RA」のアイテムは雨傘がカラー骨5色と生地12色、遮光傘がカラー骨5色と生地5色を展開するなど、カラーバリエーションは豊富なものの、すべて無地なんですね。来年からは柄物の生地もいくつかバリエーションに加えることはすでに決まっていますが、ゆくゆくは骨にも複数の色を使ったらおもしろいんじゃないか、なんて話を社内でしているところなんです。
田中:
たとえば骨をカラーグラデーション風に塗装したり、骨にゼブラ柄やヒョウ柄の柄をつけてみたり。
柴田:
いわゆる大阪の人から需要が高そうなデザインです(笑)。
田中:
そうした塗装に関する提案があればワカヤマさんからもどんどんしていただきたいですね。一方、課題をあえて言えば、これはワカヤマさんというより弊社側の問題なのですが、当初の予想よりB品が多く出ることでしょうか。
というのも、「A・A・RA」の製品をつくる際、まずは弊社が骨屋さんから傘の骨組みを仕入れて、そのパーツを社内でバラバラにしてからワカヤマさんに送って塗装を依頼します。その後、ワカヤマさんから塗装済みのパーツが納品されたら、それをまた社内で組み立てるという非常に面倒なことをしているんですね。すると、組み立てる過程でパーツ同士が強くこすれてしまって傷がついたり、塗装が一部剥げたりすることがあるんです。
藤林:
なるほど……。
柴田:
塗装後は塗装前に比べて骨やパーツに塗料の厚みが加わるので、仕方のないことだとは思ってるんですが。
藤林:
ハードコートと呼ばれる硬度の高い塗料があり、弊社の事例でいうと高速鉄道の車内スピーカーにスーツケースなどが当たって傷つくのを防ぐために使用しています。その塗料を試す手もありますが、金属のパーツ同士が強くこすれるとハードコートでも傷がつくかもしれないですね……。
西野:
ハードコートだと、現状の塗料より膜厚も分厚くなりますしね。
藤林:
たしかに。うーん、でもなんとかして対策を考えたいです。
田中:
いまのところ組み立ての際に検品して傷が見つかった骨は避けておき、ワカヤマさんから分けていただいている修理用の塗料で修正するやり方で対応できていますので。
柴田:
いま田中が申し上げたのは製造過程におけるパーツの修理の話ですが、われわれはお客様に傘を購入いただいたあとの修理に力を入れているので、ワカヤマさんに別注している修理用の骨や修理剤がとても重宝しています。
藤林:
購入後の修理はもちろん有償ですよね?
福井:
お客様に傘を購入いただいたあと、1年間は修理が無料になるクーポンをLINEで発行しています。
藤林:
無料ですか!?
福井:
本来、傘は修理しながら長く使うファッション雑貨ですし、私たちもそれを前提にモノづくりをしています。
藤林:
「A・A・RA」の傘の価格帯は1万円~2万円代が中心ですものね。
福井:
ですが、冒頭で柴田が申し上げたように、近年は市場に流通する傘の大半が外国製の安価なもので、コンビニへ行けば700円ほどでビニール傘が手に入ります。ビニール傘だけでも年間の消費量は約8000万本だと言われています。もちろん利便性の良さが私たちの生活に寄与している部分もあるとは思いますが、一方で、傘ゴミが多く出ているのも事実。たとえば首都圏では1箇所のゴミ収集所に月間で20~30トンの傘ゴミが運ばれてくるそうです。
ビニール傘って骨は鉄で生地はポリエステルなのでリサイクルできず、多くの自治体で燃えないゴミとして埋立処分されるんですね。これがいま社会問題になっているんです。
柴田:
それを解消するには安い傘を使い捨てるのはやめて、良い傘を修理しながら長く使ってもらえばいいんじゃないかと、そういう発想なんです。「A・A・RA」の傘は安い傘より数倍高いかもしれないけれど、そのぶん長く使っていただけますよと。
福井:
私たちは「A・A・RA」とは別に傘のオーダーメイド( https://note.com/sun34 )や修理もおこなっているのですが、修理に来られるお客様のなかにはお孫さんから贈られた傘だから大切にしたいとか、母の形見の傘を使いつづけたいと言う方もいらっしゃいます。私たちとしても、そんなふうに長く大切にしたいと感じていただける傘をご提供するだけでなく、それが社会問題解決の一助にもなるならば、そんなにうれしいことはありません。修理無料クーポンは、そのための取り組みの一環です。
藤林:
いやあ、いまお話をうかがっただけで、傘に対する意識がずいぶん変わりました。私たちも御社のそのような取り組みのお手伝いができていると知り、光栄です。今後の新商品開発についても、お気軽にご相談ください。本日はありがとうございました!
編集 : 株式会社KATATI / 文字 : 岸良ゆか / 撮影 : 西林将門
柴田株式会社 様
1937年創業の老舗傘メーカー、柴田株式会社。創業以来長きにわたり、傘のOEM・卸メーカーとして、名だたるブランドの傘を製造してきました。そんな同社が、85年の歴史で初めてとなる自社ブランド「A・A・RA(ア・ア・ラ)」を2023年にスタート。「A・A・RA」の最大の特徴は、業界でもめずらしい色とりどりの“カラー骨”です。ぜひ、下記リンクより「A・A・RA」の商品をぜひご覧ください。
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